菊井の森

名古屋の中心地からほど近い、大通りの少しウラに入ったところに建つ、15人の高齢者が暮らすための建築である。

この手の施設は「環境」のよいところに立地することが多い。この「環境」というのが、郊外で自然の豊かな場所をさすのが一般的であるが、事業者であるクライアントは別の視点を持ち合わせていた。

都会の真ん中こそ、楽しく暮らす場所である、といった発想である。既に数カ所の施設を運営していたが、街に近いほど、活力のあふれる場所をつくることが出来ると確信をもっていた。

我々が考えることは、都市部に立地するの中層の建物でありながら、「家」として暮らすための、暖かみのある建築をつくることだった。それは同時に「施設」といった要素を見せないことである。


柔らかい材料を使いながら、ビルらしい要素を排除していくことを考える。また、建築全体の印象を、柔らかく包み込んでくれるような構成をとる。

結果的には、周辺のよい意味での喧噪や刺激と、空間のもつ安心感とが、調和のとれた建築になったと考えている。しかし、これからの使われ方を、時間をかけて見守っていくことも、プロジェクトの続きである。


菊井の森

用途:高齢者住宅
所在:名古屋市西区
竣工:2009年11月
構造:鉄筋コンクリート造
階数:地上5階

敷地面積:137.31m²
建築面積:85.00m²
延床面積:327.98m²
設計:佐久間徹設計事務所
施工:長瀬組

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